◻三木道三(レゲエ・ミュージシャン)
未だマイナーでアンダーグラウンドながら、我々が愛して青春を捧げたレゲエの文化を映像作品にして世に広めようとしてくれることに敬意を表したいです。
私もレゲエアーティストと名乗りながら、その歴史や輪郭については未だ勉強中です。
世界的なトップアーティスト、トップミュージシャンを含む出演者たちのインタビューでまたパズルのピーズが埋まりました。
日本人として日本のことを歌う為に、ダンスホール文化に入門した自分としては、ラスタについては別の国の、自分のものでない宗教、という意識でした。
しかし、ジャマイカでのラスタとの対話で神道について説明をした私に、あるラスタは『ほ~ラスタと同じやな』という返事をくれました。
更に、ラスタの言うバイブルがいわゆる旧約聖書だということが分かった頃と前後して、神道にもどうやら旧約聖書の影響があるようだ、と思う様になり、
もう若くなくなっていく自分が、ダンスホールよりラスタの音楽が心地よく感じだしたタイミングとも重なり、
ラスタファリズムへの親近感が近年グっと高まりました。
ラスタは宗教でなくライフスタイルだ、というラスタもいますが、この映画を見た人は、ある宗教とその信者達のドキュメンタリーだと思っても不自然じゃないんじゃないでしょうか。
世界の宗教には様々な功罪があると思いますが、素晴らしい芸術を生み出す点が大きな功だと私は思っています。
半裸の様な格好で、セックスの様に踊るジャマイカのダンス(イベント)に、威厳が同居するのはラスタファリズムがあるからだとも言えると思っています。
ジャマイカ人ミュージシャン達へ、ラスタファリズムが与えたものは、信念や歌詞のトピックスなど絶大です。
現在、人類は救いをシステムやテクノロジーに求め、宗教の存在感は薄れていっています。
これが進んだ時、日本の葬式はどうなるのか。聖書に手を置いてその職につくアメリカの大統領はどうなるのか。ヨーロッパは?アラブは?
我々の愛して、日本に輸入しようと切磋琢磨したレゲエとジャマイカ人の文化のこれまでと現時点を描いているものとして、
この作品はおもしろいものですが、この数年後、世界の変化が進んだ時、この時点のドキュメンタリーが、大変化の前のモノとして振り返えられると、
この作品のおもしろさもまた違った意味を持つんだろうと思います。