Story

16世紀、アフリカから多くの黒人たちがジャマイカに奴隷として連行されて来た。時を経て彼らは自由を得たが、差別や社会的不遇は今も続いている。

1930年代にジャマイカで生まれた“Rastafari(ラスタファライ )”は、多様性を受け入れ、普遍的な愛を持って行動することを信念とする思想運動。これに共鳴したレゲエミュージシャン達により、ラスタファライは世界中に広がっていく。

その愛を持って多様性を受け入れ実際に行動に移す姿勢は、宗教や政治で人々が分断され混迷を極める現代社会において、明るい未来を切り拓くためのヒントになるだろう。

本作は、音楽の持つ可能性に魅せられた日本人監督・ 杉野啓基が、2004年から13年に渡り、ラスタファライのレゲエミュージシャン達に密着したドキュメンタリー映画。

物語の舞台はジャマイカ、エチオピア、ロサンゼルス、日本、そしてベリーズ。 

数十年の時を経て、彼らのメッセージは現代社会に、どのような影響を与えているのか。 世界中に存在するラスタファライの現状を、ラスタファライであるレゲエミュージシャンの視点から伝える。 

作中にはBunny Wailer、Lucianoをはじめとするミュージシャンが多数登場するほか、Bob Marleyの師Joe・Higgsの元マネージャーがレゲエ誕生の秘話を語るなど、レゲエの歴史を語る上で貴重な映像が満載。 

また、本作は70~80年代にかけて多くのヒット曲を残したジャマイカを代表するシンガー、 John Holtの遺作となった。

上映情報

2019年10月19日(土)〜31日(木)伏見ミリオン座(愛知県名古屋市)

2019年11月10日(日)〜16日(土)CINEMA AMIGO(神奈川県逗子市)

作品情報

映画の勉強のために渡ったアメリカで、監督・杉野が出会った第三世界出身のラスタマンたち。

彼らを通じ、レゲエミュージックとその基盤になる“ラスタファリ” の精神を知る。交流を深めるに連れ、平和で安全が保障された日本とは違った世界で強く生きる彼らの姿を目の当たりにすることになる。当初は理解し難かったその価値観に次第に影響を受け、自らの生きかたが前向きに変わっていることに気付く。

本作のタイトル“FREEDIM”とは、英語のFreedom(自由)と、かつての奴隷たちの方言であるカリブ訛りの英語 Riddim(音楽)を合わせた造語。

他者への愛、分け与える精神、多様性を受け入れること。

ラスタファリの精神が、未来の世界を明るく照らすだろう。

◻受賞歴

◻作品情報
監督:杉野啓基
出演:LUCIANO、BUNNY WAILER、JOHN HOLT、MARCIA GRIFFITHS、TRISTON
PALMA、RAS ERIC 他
ナレーション:DEREK “A.K.A. JOHNNY BLACK”
制作:highrockfilm
協力:Wesstrybe International

メッセージ

◻三木道三(レゲエ・ミュージシャン)

未だマイナーでアンダーグラウンドながら、我々が愛して青春を捧げたレゲエの文化を映像作品にして世に広めようとしてくれることに敬意を表したいです。

私もレゲエアーティストと名乗りながら、その歴史や輪郭については未だ勉強中です。

世界的なトップアーティスト、トップミュージシャンを含む出演者たちのインタビューでまたパズルのピーズが埋まりました。

日本人として日本のことを歌う為に、ダンスホール文化に入門した自分としては、ラスタについては別の国の、自分のものでない宗教、という意識でした。

しかし、ジャマイカでのラスタとの対話で神道について説明をした私に、あるラスタは『ほ~ラスタと同じやな』という返事をくれました。

更に、ラスタの言うバイブルがいわゆる旧約聖書だということが分かった頃と前後して、神道にもどうやら旧約聖書の影響があるようだ、と思う様になり、

もう若くなくなっていく自分が、ダンスホールよりラスタの音楽が心地よく感じだしたタイミングとも重なり、

ラスタファリズムへの親近感が近年グっと高まりました。

ラスタは宗教でなくライフスタイルだ、というラスタもいますが、この映画を見た人は、ある宗教とその信者達のドキュメンタリーだと思っても不自然じゃないんじゃないでしょうか。

世界の宗教には様々な功罪があると思いますが、素晴らしい芸術を生み出す点が大きな功だと私は思っています。

半裸の様な格好で、セックスの様に踊るジャマイカのダンス(イベント)に、威厳が同居するのはラスタファリズムがあるからだとも言えると思っています。

ジャマイカ人ミュージシャン達へ、ラスタファリズムが与えたものは、信念や歌詞のトピックスなど絶大です。

現在、人類は救いをシステムやテクノロジーに求め、宗教の存在感は薄れていっています。

これが進んだ時、日本の葬式はどうなるのか。聖書に手を置いてその職につくアメリカの大統領はどうなるのか。ヨーロッパは?アラブは?

我々の愛して、日本に輸入しようと切磋琢磨したレゲエとジャマイカ人の文化のこれまでと現時点を描いているものとして、

 この作品はおもしろいものですが、この数年後、世界の変化が進んだ時、この時点のドキュメンタリーが、大変化の前のモノとして振り返えられると、

この作品のおもしろさもまた違った意味を持つんだろうと思います。

Cast & Staff

◻Luciano(ルチアーノ)

1974年、ジャマイカ、デービー・タウンに生まれる。いわゆる第二世代のルーツ・レゲエ・アーティストとして、80年代からクラブシーンで活躍。92年にキングストンに移住した後、プロデューサーPhillip ‘Fatis’ Burrellの運営するレーベルXterminatorにて頭角を表す。『Chant Out』や『Poor&Simple』は、イギリスのレゲエチャートにもランクインを果たした。2016年にはグラミー賞のベストレゲエアルバム部門にノミネートしている。コンシャスなメッセージが特徴のラスタファリ。現在のジャマイカを代表するシンガー。

◻Bunny Wailer(バニー・ウェイラー)

1947年、ジャマイカ、キングストン出身。ボブ・マーリー、ピーター・トッシュとともにTHE WAILERSとして活動。『One Love』をはじめ、100曲以上のヒットソングを残す。1974年にTHE WAILERSを脱退したのち、ソロアーティストとしても精力的に活動を続けている。レゲエを世界に知らしめた立役者であり、ジャマイカ音楽史上もっとも偉大なミュージシャンのひとりとして神格化されている。

◻John Holt(ジョン・ホルト)

1947年、ジャマイカ、キングストン出身。12歳から音楽活動を始め、パラゴンズのリード・ボーカルとしてキャリアを積んだ。ジャマイカの音楽スタイルの基礎を築いた音楽スタジオ「Studio One」の創成期に活躍したシンガー。見事なまでの歌唱力を誇り、バラード歌手として時代を築いた。圧倒的なセンスと美声で80年代からはソロ・シンガーとしても活躍し続けた真の実力派アーティスト。本作撮影中の2014年に亡くなった。

◻Wesstrybe(ウェストライブ)

ロサンゼルス発のダンスホール・レゲエ・クルー。4人の兄弟たちが中心となり、多様なジャンルの音楽を取り入れた音楽表現で愛のメッセージを若者に届けている。

◻Yumiko Gabe(ユミコ・ガベ)

ジャマイカ・キングストン在住のラジオDJ、セレクター。

2005年ギネスビール主催のジャマイカ・キングストンで開催されたカーサウンド全国戦で優勝。現地でも注目を集める日本人女性の一人でもある。

◻Ras Hailu(ラス・ハイル)

エチオピア・シャシャマネに帰還したラスタファリの一人。バナナの皮を乾燥させて作るアート「バナナ・アート」作品で有名。誇り高い黒人文化や歴史を題材とした作品が特徴。

◻Derek a.k.a Johnny Black(デレク ”ジョニー・ブラック”)

ラスタファリの長老の一人。レゲエを生み出した天才アーティストの元マネージャーを務めた経験から、映画では本邦初公開の貴重な証言を語る。

波乱の人生を生き抜いた上で形成された穏やかな性格には、威厳すら宿る。本作のナレーションも担当する。

◻監督・杉野 啓基(すぎの ひろき)


1980年生まれ。 故・黒澤明映画監督の作品に感銘を受け、映画の道を志してロサンゼルスへと渡る。 ロサンゼルスの映画学校にてハリウッド式映像術を学んだのち、現地でハリソン・フォード主演 『Hollywood Homicide』等、映像制作に携わる。 学生時代に初監督したショートフィルム『Still searchin’』は、第2回黒澤明記念映画祭に公式 選出される。 2004年に起ちあげた映像製作チームのhighrockfilmにて、アメリカで多くの商業映像を制作。 2007年帰国。活動拠点を東京に移し、映画のみならず、国内外ブランドの映像、ミュージック ビデオ等、活動の場を広げる。 音楽関係の撮影経験も豊富で、2014年より、音楽フェスULTRA JAPANアフタームービーのプ ロデュースを担当。2017~2018年には世界最大の音楽フェスとして知られるULTRA MIAMIに、唯一のアジア人スタッフとして招聘され、撮影を行った。

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